ロンドン帝国大学のベン・アッシャー・マルコーニ氏の研究「多変数金融時系列予測のための時系列基盤モデル」は、時系列基盤モデル(TSFMs)が金融時系列予測における効果を探求しています。TSFMsは、特定の予測アプリケーションに利用するため、多様な時系列コーパスから学習したパターンを活用する基盤モデルの一種です。
この研究は、Tiny Time Mixers(TTM)とChronosの2つのTSFMsを、3つの金融予測タスク(米国10年国債利回り変動、EUR/USDのボラティリティ、株式スプレッド予測)で評価しました。結果は、TTMが強い移行性を示し、訓練されていないモデルに比べてより少ないデータ年数で同等の性能レベルを達成することが示されました。TTMのゼロショット性能も、ボラティリティ予測と株式スプレッド予測におけるナイーブなベンチマークを上回り、TSFMsが微調整なしで伝統的なベンチマークモデルを超える可能性を示唆しています。
しかし、TTMがナイーブなベースラインを上回る一方で、伝統的な専門モデルは3つのタスクのうち2つでその性能に匹敵したり上回ったりしました。これは、TSFMsがタスク固有の最適化よりも範囲を優先していることを示しています。研究は、TSFMsが特にノイズが多い、データが制約されているタスクにおいて金融予測に大きな可能性を持つと結論付けていますが、競争力のある性能を達成するためには、金融時系列の特性に合わせたドメイン固有の事前訓練とアーキテクチャの微調整が必要であると指摘しています。